 |
会員 CFP 清水 憲一(東京都) |
よく年の初めに遺言を書いたり書き換えたりするという話をききます。今回は初回ですから相続の基本になる遺言(ゆいごん)について解説してみましょう。自分の遺志を書面で「証書」にしておくことが大切です。
ポイントは
■遺言を残すにはどんな方法があるのか?
■費用はいくら位かかるのか?
■その効力は?
の3つです。
|
1 遺言の種別
一般的に遺言には、
(1)自筆証書遺言
(2)公正証書遺言
(3)秘密証書遺言
の3つがあります(民法に規定)。 |
(1)自筆証書遺言
もっとも簡便な方法で、自分で書いて封をしておくだけで費用もかかりません。ただし全文を手書きでかかなけばならず、署名、日付も必須です。したがって、ワープロで作ったものはダメです。
紛失のおそれもありますし、死後の存在確認の問題もあります。本人の死後、誰かが勝手に開け、内容が不本意だったとすると(勝手に開けただけで罰金が課せられます)破棄してしまって遺言が最初からなかったことにしてしまう可能性すらあります。
この自筆証書遺言は死後、すみやかに家庭裁判所に持ち込みそこで開封し、検認(証拠保全の手続き)を受けなければなりません。
(2)公正証書遺言
本人が公証役場に出向き、公証人と立会人2人の前で遺言の内容を口頭で述べ、公証人がそれを筆記しその原本を保管して呉れるものです(本人には謄本)。少し面倒ですが、内容まで保証され、安全確実です。ただし次の問題点もあります。
@)立会人は身内のものやその配偶者など利害関係者はなれません。そこで知人などに頼んだりすることも、プライバシーの点からはばかられる場合には、立会人を公証役場で紹介してもらうこともできます。紹介料が一人あたり6千円から一万円ほどかかります。ファイナンシャルプランナーに頼むのもよいでしょう。
A)公正証書作成手数料がかかります。遺産額が多いと手数料も高くなる仕組みです。
遺産額 |
相続人の数 |
手数料 |
5000万 |
1人 |
4万円 |
1億円 |
1人 |
5万4千円 |
2億円 |
1人 |
6万9千円 |
2億円 |
2人(1億づつ均等配分) |
8万6千円 |
3億円 |
2人(1.5億づつ均等) |
11万2千円 |
1億5千万円 |
3人(5千万づつ均等) |
8万7千円 |
|
宅や入院先の病院に来てもらうと手数料は5割増、さらに日当として1〜2万円が加算されます。実際は前もって公証人に内容を伝えておき公証役場では既に作成された原本の確認のみ行うのが通例で、15分くらいで済むようです。
(3)秘密証書遺言
本人が遺言書を作成し(この場合ワープロでもOKです)署名、押印した上で自ら封入、封印し、公証役場に持って行く。公証人は立会人2人とともにその封書に遺言者の住所氏名を記載し、署名、押印した後、本人に返してくれる。つまりこれだと内容を知っているのは本人のみであり、かつ真正な遺言であることのお墨付きを得たことになりますが、保管の責任は本人になります。
費用も比較的安く、1万1千円ですみます。(立会人紹介料は前記)
(注)信託銀行では遺言書の保管をしてくれますが(年間数千円〜1万円)、遺言書の作成支援から執行までのセットになることが多いようです。
どの遺言形式がよいのかはその人の置かれた状況によりますが、遺言は訂正、作り直しが効きますから(最後の日付のものが有効)とりあえず元気なうちにどれでもよいから作っておくのが賢明かと思われます。
|
2 遺言の効力=遺言が絶対ではない
遺言による遺志は当然、優先的にとりあつかわれますが、絶対ではありません。中核をなす遺産の配分についてみますと、法定相続分よりは優先されますが、遺留分(*)を侵害していると異議を唱えられた場合、遺留分が優先、また当事者全員が協議の上合意すれば、そちらが優先です。紛争になった場合、最終的には家裁の審決にしたがうことになります。
|

* 遺留分は「配偶者」「子」「尊属」について最低保証を確保しているもの。 |
以上遺言について簡単に解説しました。次回は「相続」関連テーマを予定しています。 |